【書籍紹介】UNIXという考え方
Linuxが動作する上での思想について書かれた書籍である。
普段Linuxで使っているコマンドの動きと、この書籍に書かれている動作思想に共通点が垣間見え、面白く読めた。
簡単なLinuxのコマンドは打てて、これから様々な知識を学んでいきたい、というようなエンジニアの方にお勧めしたい本である。 OSプログラムの設計思想についても書かれているので、開発者の方が読んでも面白いかもしれない。
A5判だが普通の文庫本よりちょっと薄いだろうか、程度のボリュームなのでさらっと読めるはずだ。
ではその内容についてだが、まずイントロダクションが衝撃的だった。
UNIXの創造者たちは、ある極端なコンセプトから始めた。
ユーザーは初めからコンピュータを使えるとみなしたのだ。
UNIXは「ユーザーは、自分が何をしているかを分かっている」との前提に立っている。(p.1)
言われてしまえば当たり前のことだとは思うのだが、これまで文面として、こうダイレクトに書かれた場面に出会ったことがなかった。
Linuxとは学習した人間のみを利用対象としていることに改めて気付かされ、この先にどんな本質が書かれているかワクワクしてしまう。
また、Linuxはパワーのないマシンでもそれなりに動く印象があるが、それはどうやら、OSプログラムの設計にあたり「移植性」を重視してきた結果でもあるようだ。
プログラムの速度に多少の不満があっても、現在のニーズが満たされていればそれでよしとする。
将来のハードウェアでの性能向上を常に視野に入れておかねばならない。(p.51)
現在のハードウェアでプログラムが最も効率良く動作するよりも、次世代を見据え、新しい高速のハードウェアの登場に備える方がよほど重要ということだ。
こういった内容を、Atari 2600というアメリカ製の古いゲーム機を例に用いて説明してくれている。
私は仕事柄Windowsサーバの構築やら運用を担当することが多々あったのだが、あけすけに言うと、Windowsは思った通りの動きをしてくれない印象があった。
きちんと仕組みを理解していればそんなことにはならないのだろうが、まあ、私はそんなときにLinuxに出会った。
そしてそのシンプルさに惹かれて、Linuxに傾倒していくことになる。
そのうちLinuxの仕組みを知りたくなり、生い立ちや作られた背景を知ることが手掛かりになるだろうかと思い、手に取ったのがこの本だ。
是非、読んでみて欲しい。
- 作者:Mike Gancarz
- 発売日: 2001/02/01
- メディア: 単行本